2023-06-10,11 全日本ラピッドチェス選手権 2023
前書き
FIDE レートがつくラピッド戦に参加できるようだったので参加してきました。 15+10 を 2 日間かけて 9 試合行いました。 棋譜は書かなくて良いとのことでしたが、とりあえず可能な限り書いて持ち時間が 5 分を切ってきたら書くのを止めるという方針で全試合貫きました。
私は数日間にわたって行われる大会に参加するのは初めてでしたが、90+30 の重量級の試合ならまだしもラピッドだったら大丈夫だろう、とたかをくくっていました。 ですが全くこれは誤りでした。 1 日目の 4 試合をやり遂げるのでさえも精一杯で既に疲労困憊、寝て次の日に起きても全然疲れが取れておりません。 えっ……こんなに疲れてるのに雨の中わざわざ大井町行って一日中チェスするの…… というのが正直な感想でした。 もう 5 試合目始まった時点から疲れており試合をやり遂げるのだけで精一杯、そして 6R の自殺手で茫然自失。 7R も負けて顔面蒼白になりながら 8R に臨んで辛勝、そして何だかランナーズ・ハイになってきて……という感じでした。
正直、三度の飯よりチェスが好きという人でないと数日にわたる大会は辛いと思いました。 私はそうではありませんでした。 ただ、忘れないうちに記録として記しておこうと思います。 全部の棋譜を取れておりませんので、取れていない部分は記憶を頼りに状況説明します。
会場の中で他の方が喋っているのを耳にして同意したのですが、OTB のラピッド 15+10 は感覚的にネットのブリッツ並に時間切迫します。 なのでタイム・マネージメントが大事で、特に 1 日目に時間切迫して負けることが多かったので **気持ち指すのが早すぎるかな? くらいに早く指すのが大事 ** だと思いました。 それを学んだので 2 日目のほうが長めに棋譜を残せています。
1R: ベンコー・ギャンビット
初戦は当然のように格上の方です。 しかしこの試合なんと勝ってしまいました。 なのでここが自分にとって一番輝き、興奮した瞬間でした。 格上ですが自分より年齢は上でありゆっくり指してきそうなタイプで、相性は悪くありませんでした。 1. d4 で来たのでいつものセットアップで今勉強中のベンコー・ギャンビットにしていきました。 相手の方としてもベンコー・ギャンビットは脅威だったのか結構警戒してくれたので私としても悪くありませんでした。 コンピュータの評価値的には棋譜の最後の方は白良しになっていますが、このあと進んでいってキング・ルークのフォークらしきものを決めました。 実はそのフォークはビショップで取れたので見せかけだったのですがなんと相手の方がそれに気づかず見逃し、エクスチェンジ・アップできました。 そこからこちらに流れが傾き、それでも時間切迫で混沌としながらも最後はルーク・エンディングの形に持ち込んで勝ちとなりました。
2R: シシリアン・ディフェンス・アラピン・バリエーション
2 戦目も当然格上の方です。 しかも若そうな方で指し手も速そうです。 ということで勝ち目は薄いと思いながらもいつものアラピン・バリエーションでやっていきました。 なるべく不利にならないようにしようと気をつけてやっていったのですがポジションを徐々に不利にされて結局最後はタクティクスでやられてしまいました。
3R: アレヒン・ディフェンス・フォー・ポーンズ・アタック
なるべく時間ロスをしたくないので一番慣れているアレヒン・ディフェンス固定にせざるを得なかったです。 それにしても棋譜の最後あたりでビショップがキングを睨んでおり大分いいポジションを作り上げたと思ったのですが、ここから時間切迫してブランダーを連発して負けました。 もっと時間があればとかいうのは言い訳にしか過ぎないと思いました。 最初の方だけはテンポ良く指せてはいましたが、結局のところ私のタイム・マネージメントが未熟でした。
4R: ポーリッシュ・オープニング
1 日目の最終試合で疲れ切っていたのもあってちょっと気分を変えようとポーリッシュ・オープニングを採用してみました。
悪くはないのですがやっぱりマイナー・オープニングでもそれなりにうまく対応されてしまうし、うまくやらないと今回のように c, d ポーンがバックワードになってしまうのが良くありません。
そんなにうまくはいかないな、と思いました。
なお、この対局は時間切迫前に相手の方のミスでチェックメイトを決めることができました。
19. Qxe6+ でメイトに見えますが実は 19... Kd8
で一応受かっています。
私も気づきませんでした。
5R: アレヒン・ディフェンス・モダン・バリエーション
この対局のみ相手の方と試合後に検討室で検討した試合でした1。 相手の方としても私がアレヒン・ディフェンスに詳しいと見て下手にポーンを前に出す変化は避けてきたようでした。 4... cxd6 は 4... exd6 もあるというのを仰っていてよくご存知だなと思ったのですが今回は cxd6 だとビショップの活用のためにフィアンケット一択になって指し手が限られてラピッド向きだな と私が思ったので採用しました。 10... Qb6?! はナイトが出てくるのをうっかりしていた手損のミスで、正直あまり考えていませんでした。 19... e5!? に関しては私も相手の方も散々話題にしていて、私としては ラピッドなので怪しくしたかった という主張でした。 19... e6 だと穏やかですが見るからに消極的で選びたくありませんでした。 ただ、解析にかけたところ実際は 19... e5?! が悪いのではなくその後の応手がまずかったようでした。 このあたり難しいところだと思いました。 ここのポーン・ダウンが非常に痛く、そのままずるずると劣勢を拡大させられ負けてしまいました。
6R: スカンジナビアン・ディフェンス・モダン・バリエーション
この相手の方には以前の大会で私がコテンパンに負かされました。
その時も私が白で同じようにスカンジナビアン・ディフェンス・モダン・バリエーションにされて私が白勝率が高いはずの 3. d4
を選んだのですがうまくいかなかったので、今回は強欲にポーン得を守るパターンを選択してみました。
その結果がこの体たらくです。
怖いところですが 9. Bxf6 Qxf6
としておけばまだ戦えたところでビショップを引いたのがまずく劣勢になり、15 手目でキャスリングできないことに気づいて悩みました。
キャスリングするとピース・ダウンして負けます。
なので私が悩んだ末に繰り出したのが 15. Bd1???????? という目を疑うような自殺手でした。
指した 5 秒後に気づきましたがもう遅く、相手の方の次の手でリザインしました。
7R: アレヒン・ディフェンス
これだけ負けたはずなのに当たるのはやっぱり格上の方で、しかも疲れも最悪で素直に辛いと思いました。 とはいってもやっぱり思うのは私は オープニングの知識だけは格上の方に対しても全く引けを取らない ということでした。 オープニングでは差が付きませんが、中盤力の差で負けるのがほとんどです。 そんな感じで今回もオープニングは割とうまく指し、中盤の構想力と読みの力の差で負けていきました。 棋譜に残っている最終手、27... Bc5?? がブランダーで、相手の方に正確に咎められてしまいました。
8R: ルイ・ロペス・ベルリン・ディフェンス
今回の相手の方は最初はすごく眠そうに、気だるそうにプレイされていたのが印象的でした。 それが悪かったと言いたいのではなく、私もその気持ちがよく分かってしまって思わず共感した というのが大きかったです。 わざわざ休みに出てきて一生懸命試合したのにイマイチ良い結果が出せず、疲れもピークに達している。 私はあからさまに態度には出しませんが、疲れと絶望の中黙々とプレイしていたので気持ちは同じような感じでした。 棋譜が書けている範囲内だと私がうまく指して相手のキングを追い込んでいるようですが、ここで決め損ねてしまいエンドゲームのねじり合いに突入しました。 それであっても最後は熱戦となり、相手の方が不注意で時間を切らしてしまって私に握手を求めてきたのは感動しました。 気に入らないこと、うまくいかないことがあっても人と指すチェスはいいものだな、と改めて思いました。
9R: ルイ・ロペス・ベルリン・ディフェンス
レーティング的には同格の方で、最終戦にふさわしい相手の方でした。 最終戦なので気合い入れて臨んだのですが、先ほどの試合と全く同じ出だしでしかも同じようにポーン・アップしてデジャブか?と思いました。 ルイ・ロペスの e5 ポーンを取れる条件に関してはこのあたりのレーティングでもうっかりするようで、レーティングにしてはオープニングに明るい私の長所が出た感じとなりました。 最終戦はランナーズ・ハイ状態となりタイム・マネージメントも今まで学んだ通りしっかり時間を残す形にしていったので棋譜の最後の部分で 5 分残っていました。 このあとルークも全部エクスチェンジしてわずかな優位を保ったままポーンをプロモーションさせることができ、有終の美を飾ることができました。
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基本的に疲れているので積極的に検討したくないのですがせっかくのお誘いなので検討しました ↩